財布

財布を盗まれた。

母が買ってくれた、我が家の金銭感覚からしたらかなり高い財布だった。
財布はいいものを使ったほうがいいという母親からの勧めを受けて、気が進まないながらも買ってもらったものだった。
こんなに高い財布はいらないと思いつつもやはり使ってみると愛着がわき、大切に使ってはいたのだけれど、昨夜自分の不注意によって盗難に遭ってしまった。

居酒屋で友達と飲んでいた時、本が入ったビニール袋に財布も入れて自分が座っているソファの上に置いていたところ、気づいたら無くなっていた。
「どうせ持って帰るんだからここに入れておこう」と思ってそのビニール袋に財布を入れていたのがよくなかった。考えてみればそんなことをする必要は無い。財布を買ったばかりの時の、財布を大切にしよう、という気持ちがあればそんなことはしなかったはずだ。
トイレから帰ったときに盗まれたことに気づいたけど、盗人がいつ盗んだのかは定かではない。もしかしたら自分がソファに座っている真横で盗みを働いたのかもしれない。そう考えるとつくづく間抜けだと思う。

財布を身につけていなかったのもまずかったが、ビニール袋を通路側に置いていたのがよくなかった。
反対側に置いておけば絶対に盗られはしなかった。

手ぶらでいたのもよくなかった。私はよく鞄を持たずに出掛けることがある。携帯と財布と鍵だけをポケットに入れて出掛けるのは身軽でいいのだけれど、今回のようなことが起きるリスクがあると感じた。ある程度大きい鞄に入れておけば盗みにくいはずだ。

クレジットカードはすぐに止め、中に現金もそこまで多く入っていなかったので金銭的な被害は少なかったけれど、やはり気に入っていた財布を無くすというのは精神的に辛い。
財布を無くした人がよく言う「中身は返ってこなくていいから財布だけでも返して欲しい」というのはまさにその通りだと感じた。いざ無くしてみると財布の中身より財布本体のほうがよほど重要だったと思わされた。
本に関しては一般受けするような本でもなく、非常に重いのでどこかに捨てられてるだろうと思ったけれど盗まれた場所周辺では発見することができなかった。

盗んだ方はどう思っているのか。
ラッキーだと思っているのか、中身が少なくてツイてないと思っているのか。
そもそもなぜ盗もうと思ったのか。財布を盗もうと思って飲み屋に来たとは考えにくい。魔が差したのか、色んな場所で常習的にやっているのか。持ち主が分かっているものを盗るのはかなりの覚悟がいると私は思う。よほどお金に困っていなければ盗ったりはしないと思うのだが、盗みのスリルや快感があるのだろうか。盗られた側の気持ちがちらついて決して気分がいいものじゃないはずだと思うが、人を出し抜くことを得意とする人は感覚が違うのかもしれない。そういう人間は世の中を生き抜く力が強いと思うが、こんな形でその力を発揮しても今回は成功したが窃盗はやはり犯罪でありリスクが高く本人のためにはならないと思うのだが。

リスクといえば、財布に大事なものを入れすぎだと思った。財布は他の人にとっても価値が高い。となると盗られる危険性も比較的高い。なのに自分にとって価値が高いものをたくさん入れておくのは賢いとはいえない。現金以外のカード類を保持するためのツールの必要性を感じた。
価値が高いものを持ち歩かなきゃいけないのは仕方がない。問題はどう持ち運ぶか。なんでもかんでも財布に入れていてはいけないのだ。

ああ免許証、保険証、学生証、クレジットカード。他人が持っていても仕方がないだろう。返してくれよ。